AIとプログラミングで、身近な課題を解決しよう
学校や地域の問題に対して自ら課題を設定し、AIを組み込んだ仕組みを自分でプログラミングすることで解決を目指し、現在や将来の社会でどのように活かすことができるか探究する。
2020年2月:AIを活用したプログラミング体験の内容について、及び企業の協力内容(発表会への社員の派遣/Googleオフィスでの開催、教員の方向けのオンライン研修の提供)について更新しました
2020年3月:Googleの協力によって開発された Scratch 3.0 向けAI拡張機能「TM2Scratch」を活用したプログラミング体験について、内容を更新しました
学習活動の概要
人工知能(AI)が実際に世の中で活用されている事例を見たり、簡単なAIの機能に触れてみたりすることで、これまでの情報技術とはどう違うのか、どのようなことが可能になったのかを理解する。また地域や自宅を対象としてAIで解決できそうな課題を見つけ、身の回りの課題をAIで解決する実践を行う。このように情報技術を活用しながら実践する力を育成し、AIやプログラミングを慣れ親しみながら体験し、現在や将来の生活でどのように活かすことができるか考えようとする。
探究課題: 情報技術の進展によりAIが身の回りの生活にどのような影響を与えているか探ろう。
本単元においては、身の回りの工業製品の中からAIが活用されている製品に目を向け、その仕組みを体験的に知ることや開発者の思いを知ることで、自分たちの生活にもたらされる影響やこれからの技術の応用の可能性を考えることができるようにする。
AIを使った課題解決が行えることを知ることで、自分たちの身の回りの生活に目を向けて、課題解決を行えることに気づき興味関心を持って探究的に学習を進める。また、これからより高度に情報化されていく社会において、自分たちがその社会構築に寄与できる実感をもち、自己の生き方に反映していけるようにする。
本単元は、学習指導要領第5章総合的な学習の時間第3の2(9)後段部分「第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること。」に基づき指導するものである。
身の回りの工業製品が実際にどのように動いているのかについて、調べ理解するだけではなく、実際にプログラミングの体験を通じてより深く理解することにつながると考える。
また探究的に課題を解決していく過程においてもプログラミングを活用し、実際にカタチにしていく。利用者の感想を受けて自分たちで修正することができるため、課題解決を更に進めることができる。
資料・映像の提供
- AIとはなんだろうか?
- AIの活用事例
- 画像認識・音声認識の体験アプリの提供
- Scratch 3.0向けの、AI拡張機能の提供
発表会への社員の派遣/Googleオフィスでの開催
- 抽選で選ばせて頂いた学校10校程度を対象に、AIプログラミングの成果を発表する発表会へのGoogle社員の派遣、もしくはGoogleオフィスでの開催を支援
教員の方向けの支援
- 教員の方向けの、無料のオンライン研修の提供
学習指導計画例(総時数:35時間)
目的
私たちの日常生活や社会において「技術」が活用されていることを理解するとともに、これからの未来について考えることで、この後に行われる企業と連携した総合的な学習の時間の授業に関心をもって取り組めるようにすること
- 現在の私たちの生活を便利にしている「技術」が存在すること
- 今後も様々な社会の問題を解決して未来を作っていく活動が重要であること
- それを担っていくのは私たち(児童)だという理解をすること
本時の展開
- 生活を便利にしている「技術」を知る
- 現在の生活の便利さが、昔は当たり前ではなかったこと
- 現在でも様々な「技術」が私たちの生活を便利にしていること
- 私たちの生活にはすでに様々な「技術」が導入されており、生活を便利にしてくれていることを知る
- 学校・家の中にコンピューターやコンピューターに関連するものはありますか?
- 様々な社会の問題を解決して、未来を作っていく活動が重要であることと、それを担っていくのは私たち(児童)だという理解をすること
- Society5.0のムービーを鑑賞 (2020年1月で公開停止)
- 上記までの指導をふまえて、今後行う企業と連携した授業を説明する
【課題の設定】(1時間)
- 5年生の社会科の学習をもとに身の回りの生活が便利にしてくれる工業製品にはどのようなものがあったのかを振り返る
- その中でも特に、自動的に動作し私たちの生活を豊かにしてくれる工業製品があることに触れる
- 最近は人工知能(AI)を使った製品もあることを知る
- 工業製品の中でも、人工知能(AI)を使った事例について意見を交流する
- スマートフォンに話しかけると、自動的に調べ物をしてくれる
- お店でロボットが接客や受付をしてくれている
- 将棋や囲碁でコンピュータがプロ棋士に勝った事例
- 人工知能(AI)が身の回りのいろいろなところで使われていることに気づき、私たちの暮らしにどのような影響を与えているのかを課題に設定する
【情報の収集】(3時間)
- AIってなんだろう?(Google提供の以下のビデオを活用)
- これまでのコンピュータができることを知る
- 人が書いた「プログラム」にしたがってコンピュータが計算等を実行する(電卓やメール、ゲーム等)
- Scratch等のプログラムの経験があれば振り返る(ブロックで指定した動きを実行してくれる)
- これまでのコンピュータが苦手なこと・不得意なことを知る(人の方が優れていること)
- 猫の写真を見てこれは猫であると判断することは、これまでのプログラミングでは難しい
- AIが得意なことを知る
- プログラミングで書きにくいことを、人のように理解することができる(画像の認識、音声の認識、言葉の理解)
- これまでのコンピュータができることを知る
- 事例をもとに、AIについて情報を交流する
- きゅうり農家事例では、AIがどのような機能を提供していたか?
- きゅうり農家事例では、AIを使うことでどんなよいことがあったか?
- クリーニング事例では、AIがどのような機能を提供していたか?
- クリーニング事例では、AIを使うことでどんなよいことがあったか?
- Google提供のウェブアプリを使って、既存の画像認識AIや音声認識AIを体験する
- 画像認識を試してみる(Google提供のウェブアプリ)
- https://cloud.google.com/visionにアクセス
- パソコン等のカメラを使って、教室のいろいろなもの(筆記用具、教科書、カバン等)を撮影し、AIがそのものの名前を判別する
- どのような物が認識できたか、できなかったものはあるかを情報交換する
- 音声認識を試してみる(Google提供のウェブアプリ)
- https://cloud.google.com/speech-to-text/
- https://cloud.google.com/natural-language/
- パソコン等のマイクを使って、話しかけ、AIがどのように認識するか試す
- どのような言葉が認識できたか、できなかったものはあるかについて話し合う
- TeachableMachineを使って、画像認識、音声認識のAIを自分で作ってみる
- TeachableMachineは、Googleが提供する誰でも簡単に画像認識や音声認識のAIを作れるプラットフォーム。
- 第2次では、TeachableMachineを使って作ったAIをScratch 3.0で活用してプログラミング体験を行うが、ここではその導入として自分でAIを作ってみる体験を行う。
- こちらのガイドのステップ1.を参考にすると良い。
- TeachableMachineは、Googleが提供する誰でも簡単に画像認識や音声認識のAIを作れるプラットフォーム。
【整理・分析】(2時間)
- これまでに見た教材や、AIを体験したことから、AIの技術について整理する
- AIにできること
- 画像認識や音声認識、言葉の理解等これまでのコンピュータには苦手だったこと(プログラミングでは書きにくいこと)ができるようになった
- AIを使うことによってうれしいこと
- きゅうりの仕分けが簡単になった
- クリーニング屋さんではセルフレジが作れた
- AIにできること
- 学習をもとに、AIについての現在の考えを整理・分析する
- AIの得意なこと、苦手なこと
- AIが人の代わりになるだろうか?
- AIの常識とはなんだろうか?
- AIも間違えること、苦手なことがあることを再認識
- AIと人はどのように助け合ったらいいだろうか?
- AIが担当する部分と、人間が担当する部分を分けて協力し合うことで、より効果的な活動ができるのではないか
- 人の置き換えではなく、人の作業を手伝うAIという考え方に気づく
- 例:画像認識をAIが行うが、最後は人間がチェックする
- 例:会議の文字起こしなどもAIがまず行ったものを、最後は人間がチェックする
- AIが担当する部分と、人間が担当する部分を分けて協力し合うことで、より効果的な活動ができるのではないか
【まとめ・表現】(1時間)
- これまでの学習から、自分たちの生活とAIの活用というテーマで感じたことや考えたことについて振り返りを書き、意見交換する
- 画像認識や音声認識などが、高い精度で実現できている
- 人と連携して活用することで、社会を豊かにする可能性があることを理解する
- 私たちもAIを使いこなして、身の回りの生活を良くすることができるのではないか、ということに気づく
【課題の設定】(1時間)
- 身の回りの課題解決に「AIのちから」を活用しよう
- AIが私たちの生活を豊かにしてくれる可能性は理解したが、自分たちでも作って体験して調べてみたい
- クリーニング屋さんがAIを使いこなした事例を学ぶ(Google提供の資料)
- 田原さん(クリーニング屋さん)がプログラミングやAIをゼロから学んだ話
- 一人でAIとプログラミングを作って大変だったこと
- 使ってもらってお客様やスタッフが喜んでくれたこと
- 自分たちでもAIを使ったプログラミングができるという意欲を持つ
【情報の収集】(2時間)
- Scratch 3.0プログラミングの基本を学ぶ
- 通常のプログラミングの例として、Scratch 3.0の使い方を習得する(すでにScratch 3.0に取り組んでいる場合は不要)
- NHK for Schoolにて無償で提供されている、Why!? プログラミングの「デジタル水族館を作ろう!」は、Scratchの画面の見方や基本的なブロックをカバーしていますので、参考にしていただければと思います。対応する指導案はこちら、授業で流す動画はこちらです。
- また、Why!?プログラミングのサイトには、Scratchでよく使われるコマンドと使用例を動画で解説する「動画でわかるスクラッチコマンド」というページもあるので、必要に応じて活用すると良いと思います。
目的
Scratchの拡張機能を使って、ブロック言語で画像認識・音声認識・ポーズ認識を含んだプログラミングを体験する。
【整理・分析】(2時間)
- AIを使ったプログラミングでできることを整理する
- AIが担当すること:ものや音声を認識できる
- Scratchプログラミングが担当すること:AIで認識したものを使って、命令を実行することができる
- AIを使ったプログラミングを活用して、各自でミニアプリを作ってみる
- クラスの友達を楽しませるゲームを作ろう等の目標の設定
- あいさつマシーン:人の顔を検知すると「こんにちは」という
- ものしりマシーン:画像認識で物体を検知すると、それがなにか教えてくれる
- キャラクターを声で操作:音声認識で、キャラクターを動かすゲーム
- プログラミングは、なかなか最初に思った通りには動かない。試行錯誤が必要
- クラスの友達を楽しませるゲームを作ろう等の目標の設定
【まとめ・表現】(2時間)
- 作ったアプリの発表会を行う
- AIを使ったアプリ作成での感想を交流する
- (アイデアを簡単にカタチにできた)
- (お金をかけたり、大人に頼ったりしなくても思いついたアイデアを自分たちでカタチにすることができた)
- 私たちの生活を豊かにしてくれている製品も、目に見えていない部分で様々な仕組みがプログラミングで働いていることを体験的に理解できた
- 身の回りにAIを使って課題解決している例を知り、自分たちでもできる実感を持つことができた。次は、他者のために役立つ活動に意欲を向ける
【課題の設定】(4時間)
- 社会科での地域の学びや、総合的な学習の時間で行われてきた地域活動、特別活動における学級活動等を振り返り、AIを使ってより良い生活を提供できる場所がないか探す
- 取材やアンケートを行い、学校や家庭、地域の生活から課題を探す
- 地域の課題と解決の例
- 病院やお店が混雑していて、空いている時間をお知らせしてほしい:AIを使って人や車を数えて記録して、どの時間帯が混雑するか自動的に調査する
- お店の商品の詳しい情報が知りたいが、店員を煩わせたくない:画像認識で商品を判別し詳しく紹介する
- 学校の解決
- ろう下を走る人がいて危ない:廊下を走っている人を検知して注意する
- グループに分かれて課題を設定する
- 上記などの課題について、グルーピングや整理、絞り込みを行いながら同じ課題認識の児童でグループを作り活動する
【情報の収集】(4時間)
- 対象となる課題について、関係者の声を集めて整理する
- プログラミングを活用して課題を解決する方法について整理し、設計ワークシートにまとめる
- 設計をまとめて、学級内で中間発表会を行う
【整理・分析】(11時間)
- 設計した内容を具体化する
- プログラミングでアプリを作成する
- 対象となる人に使ってもらい、感想や修正点を聞く
- フィードバックをもとにプログラミングの改修を行う
【まとめ・表現】(3時間)
- AIによる課題解決の発表を行う
- 想定していた課題と解決方法
- 実際に使ってもらった感想
- AIを使ったアプリ作成での感想を交流する
- 学校や地域の人の役に立てる実感が持てた
- うまくいった点、うまくいかなかった点についてまとめる
- AIやプログラミングを活用することにより、自分たちの暮らしや生活、世の中を変えていく可能性が広がることを改めて知ることによりまとめとする。
こちらの学習について「修正意見」を頂きました。学校での指導計画作成にご利用ください。 (修正意見にご協力頂いた先生方はこちらに記載しています)
- 社会科の授業との連携をしっかりつくり、工業製品の中にAIが組み込まれるようになったことを事前に学習しておく
- 工業製品からAIにつなげる流れが分かりづらい。従来のプログラミングとAIの例として、囲碁ソフトでは処理ロジックを人間が開発するプログラミングが中心だったが,近頃は処理ロジック自体をコンピューターが学習して作り上げる、いわゆるAIになり、飛躍的に精度が高まったような話をして、児童が「学習」するAIとプログラミングの関係性を納得させる工夫が必要。
- AIでできることを使うためには,それを活かすプログラミングが必要だということも納得させる工夫が必要。